中小企業の採用戦略|「足りないから採る」をやめ、Aパフォーマーで組織をつくる方法

「人が足りない。とにかく早く1人採りたい」
地方の中小企業の経営者さんから、いちばん多くいただくご相談です。

でも、私ははっきりお伝えしています。「足りないから採る」採用をやめた会社から、強くなっていきます。

中小企業にとって、採用は人数合わせではなく経営戦略そのものです。この記事では、私が採用コンサルティングの現場で大切にしている「Aパフォーマー」という考え方と、中小企業が今日から取り組める採用の進め方をまとめました。

この記事の結論(3行まとめ)

  1. 中小企業は1人の採用が業績を大きく左右する。だから「期待以上の成果を出す人(Aパフォーマー)」だけを採る前提で設計する。
  2. 人が足りないときに慌てて採ると、現場がさらに疲弊する悪循環に入る。採用は「誰に、どの責任を任せたいか」から逆算する。
  3. 求人では情報をとことん開示し、「向かない人」まで明示する。そのうえで選考に適度なハードルを置き、過去の事実で見極める。

中小企業ほど「1人の採用」が経営を左右する理由

大企業なら、多少ミスマッチな人が入っても組織が吸収してくれます。でも社員10人、20人の会社ではそうはいきません。

中小企業白書でも、企業規模が小さいほど「稼いだ付加価値のうち人件費に回る割合(労働分配率)」が高いことが示されています。つまり小さな会社ほど、利益の大部分が「人」にかかっている。1人の採用の成功・失敗が、そのまま会社の体力に直結するということです。

私はよく、こんなたとえ話をします。

年間数百万円かかる“機械”を導入したとします。期待どおり以上に動くのは5台に1台。残りはそこそこか、ほとんど動かないのに維持費だけかかる。そんな機械を、なんとなく買い続けている工場があったらどう思いますか?

人を機械にたとえるのは乱暴ですが、「とりあえず採る」を続けている会社は、実はこれに近い状態になっています。だからこそ、採用は経営者自身が向き合うべき経営課題なのです。

求職者にとって、就職は「人生の投資先」選び

もう一つ、中小企業の採用を考えるうえで欠かせない視点があります。それは、求職者にとって会社選びは「人生(時間)の投資先」選びだということです。

投資をするとき、情報がほとんどない会社にお金を入れる人はいませんよね。情報が足りなければ、知名度があって実績の見える“堅い”投資先を選ぶはずです。

求人もまったく同じです。どの会社も同じフォーマット、同じような文言で募集していたら、求職者が比べられるのは「知名度」と「給料」だけ。そうなれば、中小企業が大手に勝てないのは当然です。

だから私は、中小企業こそ情報をとことん開示(透明化)すべきだとお伝えしています。仕事内容、1日の流れ、働く人の本音、会社がこれから目指す方向。求職者が「ここで働く自分」をイメージできるだけの情報を出すことが、大手と同じ土俵に乗らないための第一歩です。

このあたりの考え方は、「採用コンセプトとは?『条件で来る人は、条件で辞めていく』」の記事でも詳しく書いています。

Aパフォーマーとは?「優秀な人」という意味ではありません

A・B・Cパフォーマーの違いを示した図。Aは期待以上、Bは期待どおり、Cは期待以下の成果
パフォーマーは「能力の高さ」ではなく「期待に対する成果」で考えます

私が採用の基準にしているのが「A・B・Cパフォーマー」という考え方です。

  • Aパフォーマー:そのポジションで期待される成果を上回る人
  • Bパフォーマー:期待どおりの成果を出す人
  • Cパフォーマー:期待を下回る人

ここで誤解してほしくないのは、Aパフォーマーは「学歴が高い人」や「何でもできる人」ではないということです。基準はあくまで「そのポジションで期待される仕事」。現場作業でも、事務でも、接客でも、どの職種にもAパフォーマーはいます。

逆に言えば、ある会社ではCだった人が、ポジションが変わればAになることも珍しくありません。意欲と誠実さがあり、ポジションさえ合えば、人はAになれる。だからこれは、人をふるい落とすための考え方ではなく、「その人が輝ける場所に、ちゃんと人を置くための考え方」なのです。

なぜ「Aパフォーマーだけ」を採る前提にするのか

多くの会社の求人給与は、A・B・Cすべての人を想定した「平均値」で決められています。するとどうなるか。Aパフォーマーから見ると安すぎて応募がなく、Cパフォーマーから見ると割のいい求人になってしまうのです。

反対に、「Aパフォーマーだけを採る」と決めれば、その人が生み出す成果を前提に給与や待遇を組み立てられます。中小企業が賃上げをしていくためにも、採用基準をAに置くことが近道だと私は考えています。

「足りないから採る」が会社を弱くする悪循環

人が足りない、急いで採用、現場がさらに疲弊、既存社員が辞める、という採用の悪循環を示した図
慌てた採用が、次の人手不足を生んでしまう

意外に思われるかもしれませんが、採用は「人に余裕があるとき」にしかうまくいきません。

新しい人が入ると、教育やフォローで既存社員の手がとられ、一時的にはむしろ人手が足りなくなります。もともとギリギリの状態でそこに合わない人が入ると、現場はさらに疲弊し、いちばん頼りにしていた社員が辞めてしまう。そしてまた「人が足りない」に戻ってくる。この悪循環に入っている会社を、私はたくさん見てきました。

本当に人が足りないときは、焦って採るより先に仕事のほうを減らすことも選択肢です。受ける仕事を絞る、定休日を設ける、外注できる業務は外に出す。そうして少し余白をつくってから、腰を据えてAパフォーマーを採りにいく。遠回りに見えて、これがいちばんの近道です。

誰から採るか?最初は「スペシャリスト」より「任せられる人」

専門職から増やすと判断が社長に集中し、任せられる右腕から採ると社長が判断しなくても組織が回ることを示した比較図
社長がボトルネックになっていないかを、まず確認します

「どのポジションから採るか」も、中小企業の採用ではとても重要です。

小さな会社では、多くの場合社長自身が会社のボトルネックになっています。この状態で専門職(スペシャリスト)ばかりを増やすと、それぞれの相談や判断がすべて社長に集まり、かえって社長の時間が足りなくなります。

だから最初に採るべきは、社長の判断や責任の一部を引き受けられる「任せられる人(ゼネラリスト・右腕)」です。その人が現場をまとめてくれるからこそ、社長は次の一手を考える時間を取り戻せます。

「職種」ではなく「委任したい責任」で考える

ここで私がおすすめしているのが、「どんな職種が欲しいか」ではなく「どの責任を任せたいか」で考えることです。

「営業マンが欲しい」ではなく、「新規顧客の獲得から契約までの責任を任せたい」。こう考えると、求める人物像も、任せる範囲も、払うべき給与も一気に明確になります。あわせて、自社の強みの源になっている仕事(コア業務)は社内で、それ以外は外注も検討する、という線引きもしておくと、本当に必要な採用が見えてきます。

また、右腕を選ぶときは「自分と似た人」ではなく、自分の苦手を補ってくれる「自分と逆のタイプ」を選ぶのがポイントです。

Aパフォーマーを採るための5ステップ

Aパフォーマーを採るための5ステップ。責任を洗い出す、正当な給与を決める、向かない人を明示、選考に適度なハードル、過去の事実で見極める

ステップ1:社長が抱えている責任を洗い出す

まずは紙に書き出してみてください。社長がいま抱えている仕事と責任をすべて並べ、「これは自分でなくてもいい」「これは任せたい」というものに印をつけます。ここが、募集するポジションの設計図になります。

ステップ2:Aパフォーマーに払うべき「正当な給与」を決める

周りの相場に合わせるのではなく、「この責任を期待以上に果たしてくれる人に、いくら払うべきか」から考えます。大事なポジションを安い給与で募集するのは、いちばんもったいない失敗です。期待する仕事ぶりも、あわせて言葉にしておきましょう。

ステップ3:求人で「向かない人」まで明示する

求人票や採用サイトでは、良いことだけでなく「こういう方には向いていません」とはっきり書きます。応募者が自分で合う・合わないを判断できるので、ミスマッチが減ります。「応募が減るのでは?」と心配されますが、実際にはむしろ本気度の高い応募が集まりやすくなります。

Indeedでの具体的な書き方は「Indeedで応募が来ない原因は『職種名』かもしれません」も参考にしてください。

ステップ4:選考に「適度なハードル」を置く

応募フォームで志望動機を書いてもらう、簡単な課題をお願いする、まずは電話で話す。少し手間のかかる選考は、Aパフォーマーにとっては苦になりません。情報をしっかり開示し、魅力が伝わっていれば、本気の人はそのハードルを越えてきます。

ステップ5:面接は「過去の事実」で見極める

面接では、誰もが“理想の自分”を見せようとします。だからこそ「これまでの職場でどんな失敗をしたか」「そのときどう動いたか」など、過去の具体的な事実を聞くことが大切です。可能であれば、本人の了承を得たうえで以前の職場の方に話を聞く(リファレンスチェック)のも有効です。

そして、面接で感じた「なんとなくの違和感」は無視しないこと。私の経験上、悪い予感はたいてい当たります。誠実さや粘り強さのような「入社後に変わりにくい素質」に不安があるなら、ほかがどれだけ魅力的でも見送る勇気を持ちましょう。

中小企業がやりがちな採用の失敗チェックリスト

最後に、ご相談の現場でよく見かける失敗をまとめました。当てはまるものがないか、チェックしてみてください。

  • □ 人が辞めたら、反射的に同じ求人を出している
  • □ 「どんな人に、何を任せたいか」を言葉にしないまま募集している
  • □ 給与や休日など、条件面だけで大手と勝負しようとしている
  • □ 「ダメならあっちの部署へ」と、消去法で配置を決めている
  • □ 右腕にしたい人ほど、安い給与で採ろうとしている
  • □ 面接で感じた違和感を「人が足りないから」と目をつぶっている
  • □ 採用を担当者任せにして、社長が関わっていない

特に最後の項目は大切です。社員数がまだ少ない会社では、採用はいちばん効果が出る「社長の仕事」です。

よくある質問

Q. Aパフォーマーだけを採るなんて、中小企業には無理ではないですか?

A. Aパフォーマーは「スーパー人材」のことではありません。「そのポジションで期待以上の成果を出す人」です。任せたい責任をはっきりさせ、それに合う人に向けて情報を開示すれば、中小企業でも十分に出会えます。

Q. 人が足りなくて現場が回っていません。それでも採用を急がないほうがいいですか?

A. 急ぐこと自体は問題ありませんが、基準を下げて採るのはおすすめしません。合わない人が入ると現場がさらに疲弊します。受ける仕事を一時的に絞る、外注を使うなどで少し余白をつくり、そのあいだに基準を持った採用を進めるのが結果的に早道です。

Q. 求人に「向かない人」を書くと、応募が減りませんか?

A. 一時的に応募数が減ることはあります。ただ、入社後のミスマッチが減り、本気度の高い応募の割合が増えるので、採用全体の手間とコストはむしろ下がります。

Q. 最初に採るべきポジションはどこですか?

A. 多くの中小企業では、社長の判断や責任の一部を任せられる「右腕・まとめ役」からです。専門職を先に増やすと、判断が社長に集中してボトルネックが悪化しやすくなります。

まとめ:採用は「人数合わせ」から「経営戦略」へ

人手不足の時代だからこそ、「足りないから採る」から卒業する必要があります。

  • 小さな会社ほど、1人の採用が経営を左右する
  • 求職者にとって就職は人生の投資。情報を開示しなければ選ばれない
  • 採用基準は「Aパフォーマー」。どの職種にもAはいる
  • 最初に採るのは、社長の責任を任せられる人
  • 「任せたい責任」から逆算し、向かない人まで明示して採る

採用が変われば、会社は本当に変わります。私はこれまで、ホテル、医療、建設、学習塾など、さまざまな業種の地方中小企業の採用をお手伝いしてきましたが、うまくいく会社に共通しているのは「誰に何を任せたいか」を社長自身が語れることでした。

「うちの場合、まず誰から採ればいい?」「求人票のどこを直せばいい?」と迷ったら、お気軽にご相談ください。いまの求人票・採用サイトのどこで求職者が離れているのか、一緒に確認します。

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長嶋雄二

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